すばる星空倶楽部

星のお話

Vol.03 ギリシア神話のすばる

プレアデス7姉妹
「プレアデス星団」の “プレアデス”は、ギリシア神話に登場する七人姉妹の女神たちにちなんで名づけられました。彼女たちは、世界の果てで天球を背負って立ち続けているタイタン神族のアトラスと、同じタイタン神族オケアノスの娘プレイオネの間に生まれた子どもたちです。プレアデス星団の星ぼしには、姉妹たちとその両親の名がつけられています。

女神たちの名前 女神たちの名前 七姉妹の女神たちの名前(マウスオーバーまたはタップ)

プレアデス姉妹は月の女神アルテミスに仕える侍女(じじょ)たちです。あるとき森で遊んでいると、乱暴者の狩人(かりゅうど)オリオンが現れて、彼女たちを追い回し始めました。その様子を見ていたアルテミスは、彼女たちを鳩(はと)の姿に変え、スカートの中に隠して守りましたが、オリオンはその後5年間も、姉妹たちにしつこくつきまとったのです。(“プレアデス”の名は、鳩の群れを意味する古代ギリシア語に由来するという説があります。)

姉妹たちをあわれんだ大神ゼウスが、彼女たちを天上にかがやく群れ星にしてあげましたが、オリオンもプレアデス近くの空に上げられてしまったため、いまだに姉妹たちを追いかけているかのように見えます。しかし、どんなに追い回しても絶対に追いつけない〜星座たちの物語は、じっさいの星ぼしの配置や動きをふまえて創られたのだ、と思えてなりません。

プレアデス星団は、オリオン座の西に位置するおうし座に属しています。オリオンがこん棒を振り上げて立ち向かっている牡牛、その鼻すじあたりに輝くヒヤデス星団の星ぼしも、ギリシア神話によるとプレアデスと同じアトラスを父とする異母姉妹たちだったのです。

女神たちの名前

行方知れずのプレヤード伝説
ところで、肉眼(にくがん)で見えるプレアデス星団の星の数は、ふつうの視力の人で6個ほどでしょう。七姉妹の星なのに、なぜ6個? この疑問には、7番目の星が見えなくなってしまった理由を「行方知れずのプレヤード」伝説が答えています。

見えなくなったのはエレクトラで、息子ダルダノスが築いたトロイヤの町が滅ぶのを見て悲しみ、彗星(すいせい)となって消え去ったからだ、とか、姉妹の中で、ひとりだけ人間の、しかも神々に逆らったシシュポスを夫にしたことを恥じたメローペが、姉妹たちのもとを去ってしまったからだ、とか。

プレアデスの星が一つ消えて六つになったという不思議な話、じつはアメリカやアフリカ、日本など他の国にもありまして、とても興味深いですね。種まきや収穫、航海の季節を知らせてくれる目じるしの星、すばる(プレアデス星団)は、世界中の人びとに見つめられ続けてきたのです。

文:茨木孝雄(元杉並区立科学教育センター)

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