すばる星空倶楽部

星のお話

Vol.01 星はすばる−古来親しまれた星団の姿は

写真提供/株式会社ビクセン

10月、星空は早くも冬の到来を告げています。夜8時頃に東の空に姿を現すおうし座の「プレアデス星団」は、その先駆けと言えるでしょう。このプレアデス星団は、日本では古くから「すばる(昴)」という和名で親しまれてきました。

肉眼では6個ないし7個ほどの星がごちゃごちゃとまとまって見えますが、実際には100個ほどの若い星の集団です。星団の中でも、不定形でまばらに星が集まる「散開星団」に分類されています。一つ一つの星は太陽のように自ら光を放つ恒星で、その年齢は数千万年。壮年期に例えられる年齢およそ46億年の太陽に比べると、桁違いに若い星々です。恒星は単独で生まれることはなく、星を作る材料が含まれる冷たい星間ガスの塊の中で、集団で生まれます。すばるを構成する100個ほどの星々も、皆、数千万年前に同じ親のガスの塊から生まれた兄弟姉妹なのです。ギリシャ神話ではこの星団の星々が七人姉妹の姿とされていますから、おもしろい偶然です。

このすばるを撮影した写真には、明るい星を取り囲む雲のようなものが見えます。とくにメローペという名前の星の周りで目立つため、「メローペ星雲」とも呼ばれているようです。これは、星間ガスが星の光を反射して輝く「反射星雲」です。すばるの星々が生まれたときの名残のガスと誤解されがちですが、実はすばるとは赤の他人。たまたまこの近くを通過している星間ガスが星団と衝突して青白く輝いている姿なのです。星団に美しさを添える反射星雲、すばると星間ガスとの遭遇を私たちはいま偶然目にしているのです。

すばるは、地球からの距離が近く肉眼でも楽しめる存在感のある星団です。440光年のかなたから届くその光に、ぜひ双眼鏡を、そして望遠鏡を向けてみましょう。視野にあふれんばかりの何十個という星々の姿にため息が出ることでしょう。秋から冬へ向かう季節、冴え渡る夜空に高く昇るすばるの輝きをじっくりと眺めてはいかがでしょうか。

文:小野智子(国立天文台天文情報センター)

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