様々なスタッフが集まって結成されるSUBARUチーム
ニュルブルクリンク24時間レースのSUBARU/STIチームは総勢30名ほど。辰己総監督、沢田監督を筆頭に、4名のドライバー、前回ご紹介した8名のディーラーメカニックの他に、STIスタッフ、SUBARUスタッフ、外部エンジニア、スバルテクニカルセンターヨーロッパ(STCE)のスタッフなどで構成されています。

STIのスタッフは約20名。その中でもエンジニアという立場から、車両に関わるのは13名ほど。彼らは主に空力パーツなどに関わる「車体チーム」、タイヤ/ホイールなど足回りに関わる「シャシーチーム」、そしてエンジンなどのパワーユニットに関わる「パワーユニットチーム」に分かれていて、レースまではレース車両の実験開発に携わり、レース現場では外部エンジニアやディーラーメカニックとともに、車両の整備やピット作業を行ないます。

ノートラブルでのチェッカーフラッグ
今回インタビューしたのは、ニュルブルクリンク24時間レースを走ったSUBARU WRX STIのパワーユニットを担当した大塚達也さん。まずは、今回のレースの感想を聞きました。
「やはり印象に残っているのはノートラブル、ノーアクシデントでチェッカーフラッグを受けた瞬間です。昨年は、レース中に止まってしまう場面もあり、車両の各所に課題が残ったレースでした。今年は、性能アップはもちろんですが、STIスタッフ全員で、とにかくトラブル無く走りきる車両を作ることに集中して取り組んできました。それが結果につながった瞬間でした。」

STI パワーユニット技術部 大塚達也さん
「チェッカーフラッグの瞬間は、『クラストップで嬉しい』、『最多周回で嬉しい』というよりは、とにかくホッとしました。ドライバーの勝ちに対する強い思いにきちんと応えられる車両、ドライバーが思う存分走ることのできる車両を作るのが、私たちエンジニアの仕事です。そういう点では、トラブルなく走りきれる車両を作れてよかったという安心の気持ちが大きかったですね。」

ほぼ1年かけて取り組んだ新ECU開発
「実はそんなケースは稀なのですが、私は、ここ1年ほどニュルブルクリンク24時間レースの車両開発に専念してきました。それは長年の課題だった、ECU(エンジンコントロールユニット)の変更を実現するためです。昨年のレース中のストップはECUに水がかかってしまったことが原因。そこで、新たに水上バイクにも使えるような防水タイプのECUを採用しました。昨年の12月に初めて車両に搭載して以来、何度もテストコースを走り込み、改善を重ねてきました。」

富士スピードウェイでのシェイクダウンの様子
STIスタッフは、市販車や市販パーツの開発に関わったり、スーパーGTなど他のモータースポーツに関わったりといくつかの業務を兼任しているのだそう。
同じスタッフが、レースにも車両やパーツ開発にも関わるため、レース車両の開発やレース現場で蓄積された知見やデータは、市販の車両やパーツ開発にスピーディにフィードバックされていきます。
例えば、今回、ニュルブルクリンクを走ったSUBARU WRX STIのホイールは今年新たに開発されたものですが、こちらをベースにした市販のホイールも今後商品化される予定なのだそう。

監督もスタッフも一緒になって働くのはニュルならでは
「ニュルブルクリンク 24時間レースが私たちにとっても特別なのは、やはり車両の開発から、車両やパーツの輸送の手配、荷物の梱包、開梱まで自分たちの手で行うところ。レース会場近くにガレージを作ったり、レース会場にベースを作ったり、ピットのセットをしたりといった設営・撤収もチーム全員で行ないます。それこそ、辰己総監督や沢田監督もみんなと一緒に働くんです。シェイクダウンからレース期間中にかけて、そういうことを何度もしているうちに、チームの結束が深まっていくのだと思います。」

声援は力だ
東京都三鷹市にあるSTIショールームの柱には、日本だけでなく、世界中のあちこちからやってきたファンの応援のメッセージ、勝利への祝福のメッセージが書き込まれている。
「こういう、お客様やスタッフからのメッセージを見ると、やはり応援してくださる皆様をがっかりさせちゃいけないなと思いますね。力にもなりますし、身が引き締まる思いもします」という、大塚さんはもう来年を見据えているようでした。

