歓喜のチェッカーフラッグ
2019年6月23日午後3時半。24時間目のチェッカーフラッグの後、SUBARU WRX STIがフィニッシュラインを通過。ノートラブル、ノーアクシデントでクラストップをキープし続け、過去最多周回数の145周(約3,679km)を走破という結果に、SUBARU /STIチームは湧きました。総合順位は過去最高順位タイの18位、2011年の初優勝以来6度目、昨年に引き続き2連覇となるSP3Tクラス優勝となりました。

SUBARU/STIチームを支えるディーラーメカニック
さて、そんなSUBARU /STIチームを支えるメカニックには、STIのメカニックのほかに、全国のSUBARUディーラーから厳しい選考を経て選出されるディーラーメカニックがいます。ディーラーメカニックは、ミスの許されないレース現場独特のプレッシャーの中での作業を経験することでメカニックとしての技術を高めるとともに、多くのスタッフが連携するレース現場で重要となるチームワークやコミュニケーションのあり方を学びます。

小さい頃からクルマが好きで、小学生の頃からSUBARUのラリーカーのチラシや雑誌の切り抜きを集めていたという浦山メカニック。迷うことなく、自動車整備士の道を選んだのだそうです。
「SUBARUのディーラーメカニックは全日本ラリーや86/BRZレースなどのモータースポーツにメカニックとして帯同するチャンスがあります。そんなレースの最高峰がニュルブルクリンク24時間レース。全国のメカニックが憧れるこの舞台に立つには、厳しい選考があります。」
応募できるのは、SUBARUのディーラーメカニックの中でもTS-1級という高いレベルのスキルを認定されたメカニックのみ。さらに、決められた作業を指定時間内で作業する様子を収めた動画などで、厳しく選考されます。

「何より嬉しかったのは、福島スバルから3年連続でニュルブルクリンク24時間レースにメカニックを送り出せたことです」と語るのは、浦山メカニックの練習や選考動画の撮影に全面的に協力したという福島スバルの原メカニックと円谷メカニック。ともにニュルブルクリンク24時間レースを経験している先輩です。

(左が2017年にニュルブルクリンク24時間レースに帯同した原メカニック、右が2018年に帯同した円谷メカニック)
ドライバーを安全に送り出すという意味では普段の整備と同じ作業
SUBARU /STIチームの中でのディーラーメカニックの役割は、主にピットインの際のタイヤ交換。今年から8名体制になったディーラーメカニックは、レースの前半と後半を交代制で担当しました。
「ドライバーが安全に走れるようにクルマを整備して送り出すという点では、普段やっているお客様のクルマの整備と同じです。取り外したり、着けたりする部品を傷つけることのないよう大切に扱うという点もまったく同じです。もちろん普段は秒単位で作業をするなんてシーンはまずないので、そういう点でのプレッシャーは全然違いますが、私は普段から時間にこだわって仕事をしているので、そういう点でも普段の経験がレース現場で活かせたのではないかと思います。」と浦山メカニック。

400度を越すブレーキパッド
レース後半、左前タイヤを担当した浦山メカニックが、一番、印象に残っているというのは、レースも後半に入り、残すところ7時間というところでのブレーキパッド交換。
「いつでも交換できるように準備はしていますが、ブレーキパッド交換はレース中に1回あるかないかのこと。バックストレートに入ったところで、ドライバーから声がかかると、私たちはタイヤや工具を準備して待機するのですが、その時に急遽ブレーキパッドも交換という指示が入ったので、緊張で心臓がばくばくしていました。
あとで聞いたのですが、レース中のブレーキパッドは400度を越す熱を持っているのだそうです。実際、作業用グローブと耐火布を通しても扱えないくらいに熱いんです。あんな温度のパーツを扱うのは後にも先にも、この時だけだと思います。」
ちなみに、だいたい90分に1回のピットインとピットインの合間は、ただ待っているのではなく、外したホイールを洗浄し、タイヤ交換に出したり、タイヤ交換されたホイールをタイヤウィーマーで温めたりと、めまぐるしく働いているのだそう。

コミュニケーションの大切さを同僚に伝えていきたい
最後に、レースが終わって、2ヶ月以上がすぎた今、レース現場での経験を通して、今、感じていることを伺いました。
「ディーラーメカニックは、シェイクダウン、予選・レース本番と非常に短い時間の中でチームワークを作り上げていかなくてはなりません。それが可能なのは、全員がコミュニケーションの重要性を認識していて、積極的にコミュニケーションを取っていたからだと思います。店舗に戻ってから一緒に働いているスタッフにもコミュニケーションの大切さを伝えて、チームワークを高めていけるようにしていきたいと感じています。」

