第四話「 その夜、僕らに起きたこと 」
20時少し前。1月の夜。
お気に入りのコーヒーミルでひいて
ドリップしたコーヒーをマグボトルに入れる。

愛犬のボーダーコリーがいつものように座席に通り乗り込んでくる。
この車にしてから、今までよりも一緒に出かける回数が増えた。
エンジンをかけると、その眼で
「さぁ、行こうよ」と言っているのがわかる。
そう、僕は彼の言葉がわかるんだ。

彼とのドライブは、気分転換というよりは、
気持ちの奥の方に溜まったものと向き合える時間だ。
特にこういうキリリとした夜の空気の時ならば、そう実感できる。
40歳が目の前に迫ってきた。
同年代の友人が、それぞれ自分の人生と向き合い、
今の最善と思える結論を出している。

クルマは郊外を抜けてきた。
「今日はもうちょっと行ってみようよ」
そう彼に言われて、アクセルを踏み込んだ。
またひとつ、決断を下した友人がいた。独立して起業したのだ。
不安もあるけれど別の人生の楽しみを見つけようと思う。
ふっと息を吐くように笑っていた。
自分は階段を登っていたつもりだったが、
踊り場で止まっているだけだろうか。
あるいは同じところをぐるぐる回っているだけだろうか。

走るクルマの前には
大きく曲がりくねった道。
最初の予定よりも随分と遠くまで来たことに気がついた。
そろそろ今日のドライブも折り返し地点かな、と思いながら
彼と外に出て、熱いコーヒーをすする。

その時、目の奥が何となくパチっとした。
痛みや目眩ではないが、星のような、
閃光のようなものが一瞬通りすぎるような感覚。
「もうちょっと先まで走ってみようよ」
尻尾を振りながら彼がそう語りかけてきた。
そして、こうつづけた。

「ひとりじゃないんだから、大丈夫」
その時、頰が濡れた気がした。
雪だ。
この冬初めての雪が積もりはじめた路面を
しっかりと手のひらで感じながら、走った。
雪が降っているのに、きらめく星々も見える。
そんな不思議な夜だった。

「その夜、僕らに起きたこと」
この物語は、SUBARUを愛する人々の実話に基づいています。
そしてこれからも、SUBARUを愛する皆様によって紡がれていきます。

これからも、よろしくな。
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