「 SUBARU には、七つ目の星がある。」
悩んで立ち止まった時は、愛車を洗うのがいつの頃からか習慣になった。
磨くことに没頭すると、余計なことを考えなくて頭がスッキリするのだ。
特に、少し癖はあるが気に入っている、六連星のエンブレムを磨いている時が好きだ。
それは、以前にエンブレムにまつわるエピソードを聞いたからかもしれない…

地球から444.2光年先にあるプレアデス星団、和名 SUBARU(昴)。
はるか彼方にあるその星団には、肉眼でもよく見える六つの星の他に、
霞んだ星雲で隠れてはいるが、実際は七つ目の星があるという。

…そんな果てしない遠くの出来事を想像すると、目の前の悩みのこともいつの間にか忘れられる。
最近は、娘も洗車を一緒に手伝ってくれるようになったことも特別な時間である理由だ。

なかなか思うように進まない担当プロジェクトや人間関係の煩わしさ。
気にしすぎる周りからの評価。
そんなことに振り回されて気持ちが塞いだ時、ふと、少年時代の天体観測の愉しさを思い出した。
星空をただ無心で眺めることで、不思議と心の靄が晴れるような気がした。
だから娘に「今度、星空を見に行こう」と言ってみた。

「パパ、まだー?」
今日は、娘と星空を見に行く約束の日。
やっと約束の星空を見に行けるとあって、娘は朝から上機嫌だ。
クルマへ向かうと、どこか得意げにニッと笑った娘が六連星のエンブレムの前に立っていた。
…すると、娘が六連星のエンブレムに、星の形をしたシールを貼った。
それは、幼稚園で頑張ったときに先生が貼ってくれるシールのはずだ。

七つ星のエンブレム。
その、一つ星が増えた六連星のエンブレムをじっと見ていたら、嬉しさとともにハッとした。
本当はいつもそこにある、光の輝きを見逃していたのかもしれない。
心の靄を晴らすのではなく、
霞んでいる中に確かにあると想える輝きを、忘れていたのかもしれない。
自分が心で感じることに、素直になることの大切さを。
だからこそ、娘が貼ってくれた七つ目の星のシールに魅せられた。
そうだ。今日、星空を見ながら娘に教えてあげよう。
星空を見上げた時、霞んで見える先にも、確かな光はあるんだということを。
それを教えてくれたのは、君なんだということを。

プレアデス星団の七つ目の星。
目には見えないけれど、確かにあると想える輝き。
目には見えないからこそ、確かにあると想える輝き。
その輝きは、大切なことを教えてくれる。
「SUBARUには、七つ目の星がある。」

この物語は、SUBARUを愛する人々の実話に基づいています。
そしてこれからも、SUBARUを愛する皆様によって紡がれていきます。
あとがき
ギリシア神話によると、プレアデス星団の星々は、
アトラスとプレイオネの娘たちとのこと。
そして七人目の娘は、靄がかかった星雲で肉眼では見えないのです。
その、七つ目の星は人によって違うものなのだと思います。
わたしにとっては、自分の中に本来はある素直な自分自身です。
みなさんにとっての七つ目の星は、なんでしょうか。

みんなのコメント
こころ温まる良いお話ですね。
私の7つ目の星はいったい何なのだろう? 「家族への想い」かな?
普通の生活の中では忘れかけているけれど本当に大切なことが実はあるんだということに気づかせてくれる、改めて考えさせてくれるとても良いお話だと思いました。
先日の阿智村での星空観察イベントは中止になりましたが屋内イベントには行ってみました。その中でこのお話は先行上映されたのですがその時は残念ながら後ろの方の席でよく画面が見えなかったので、こちらで見られることができて感激しました。
第一話ということは続きがあるということですよね?
素敵なお話の続きを楽しみにお待ちしております。
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