秋の夜長、虫の音を聞きながらお月見なんて、情緒があっていいですよね。古くから人々の心を癒してきたお月見ですが、最近ではまた新たな楽しみ方が話題となっているようです。しかも ねらい目は満月にあらず!? あるタイミングにだけ、月面に現れる謎のX、V…?? さて、月では今、何が起こっているのでしょう?
今年の中秋の名月は…、小さい? 丸い??
★今年の中秋の名月は…、小さい? 丸い??
<上弦の月>
太陽光が横からあたり陰影ができるため、月の欠け際を観察するのに適している。撮影:Ⓒ榎本司
月は自ら光を発する天体ではなく、太陽光があたることによって私たちに見えています。月全面に太陽光があたれば、全面が明るく見えるので満月、太陽光が横からあたって、半分しか見えないときは上弦や下弦の月となるわけです。
月に真正面から太陽光があたっている満月の頃、月面の凹凸による影はほとんどできません。しかし斜めから光があたっている、満月以外のときは、山脈やクレーターの縁の影ができて地表のでこぼこが際立ちます。3D感が増して、リアルな月の姿を実感することができます。
ではまず、天体望遠鏡で上弦あたりの月から見てみましょう(※1)。このころ、月はお昼過ぎに昇り始め、日没には南の高い位置に出ています。注目するのは欠け際。太陽光があたっている部分とあたっていない部分の境目です。
最も目を引くのは、月面中央部に見えるだんご3兄弟みたいな3つのクレーター、中央火口列。天体望遠鏡の倍率を上げて見ると、真ん中のアルフォンススと一番小さいアルザゲールの中心部に、中央丘と呼ばれる丘が見えます。
月面には無数のクレーターが見られますが、クレーターはほかの天体が月に衝突した跡です。こんなにぶつかってきたなんて、月も大変でしたね。
さらに北の方を見ると、全長600kmほどのアペニン山脈が迫力ある姿でそびえています。
また下弦の頃(※2)に中央火口列を見ると、上弦とは逆から太陽光があたって、また少し違った印象を与えます。月の欠け際は毎日変化します。見る度にいろいろな地形を発見でき、月面観察はいつまでも飽きることはないでしょう。
※1…10月6日、11月4日、12月4日とその前後数日(2019年)。
※2…9月22日、10月21日、11月20日、12月19日とその前後数日(2019年)。
まずは次の画像をじーっと見つめてみてください。見えましたか? これが最近話題となっている月面Xです。上弦の月で、ブランキヌス、ラカーユ、プルバッハという3つのクレーターの縁がうまくつながって、Xの文字を浮かび上がらせています。
月面Xを見るには天体望遠鏡が必要となりますが、きれいにXに見えるタイミングはわずか1時間ぐらいしかなく、少しでも時間がずれると微妙なXになってしまったり、Xに見えなくなってしまいます。またぴったり同じ月齢をねらっても、月は秤動[ひょうどう](※3)というわずかな首振り運動があるので、同じように見えるとは限りません。
2018年と2019年は、この月面Xは昼間に見えることが多く、2019年の10月6日14:00前後にも現れる可能性があります。方角は南東付近、高度7度ほどの低い位置を天体望遠鏡でのぞいてみてください。日中なので、太陽を視界に入れないよう、十分に気をつけて観察しましょう。
※3…月は地球に対して常に同じ面を向けていますが、厳密には上下左右わずかにブレるため、同じ月齢でも模様や地形の位置が変化して見えます。
<月面X>
上弦の頃、限られた日時のみ欠け際にアルファベットの「X」が浮かび上がる。撮影:Ⓒ角田豊(2018.5.22)
<月面L(O)VEとX>
撮影:Ⓒ竹尾昌(2018.3.24)
Xがあるなら、ほかの文字もあるのでは!? 実は画像のようにVの文字も発見されています。つまり月面にXVが! さらにLやEも見つかり、これにクレーターをOの文字に見立てて加えると…、LOVE! これらは全て上弦の頃に見えるので、10月6日(20:30ごろという予測も!?)やほかの上弦の日に探してみてください。
また上弦に限らなくても、日々、形を変える月を、皆さんも天体望遠鏡でじーっくり眺めてみましょう。新たな文字、新たなメッセージがみつかるかもしれませんよ。
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<ポルタⅡ A80Mf+スマホで撮影した満月>
撮影:2017.11.4
<最も大きい満月と最も小さい満月>
目で見ただけでは小さいかどうかよくわかりませんが、こうして写真で比べて見ると違いがわかりますね。撮影:Ⓒ井川俊彦
今年の中秋の名月は9月13日(金)。明治時代初期まで使われていた旧暦(太陰太陽暦)を仮に現代に当てはめると八月十五日、つまり秋(=七〜九月)の真ん中(=八月)の十五夜(≒満月)にあたります。
当時は新月の日を一日[ついたち]として十五日の月は満月だと決め込んでいました。しかし実際には十五日は満月でないことも多く、今年の中秋の名月も満月の1日前となります。よーく見て、月のどこが欠けているか探してみましょう。
十五日が満月になったりならなかったり…。これは月の公転軌道が正円ではなく だ円であることなどが関係していて、新月→上弦→満月→下弦→新月の周期が一定ではないことも原因の1つです。また月の公転軌道がだ円であることは、地球と月の距離も変え、9月14日は今年最も遠い、つまり小さく見える満月となります。最近ではスーパームーンの逆、ミニマムムーンとも呼ばれているようですね。
※漢数字の日付は旧暦(太陰太陽暦)を当てはめて計算した日付です。
出典:科学情報誌「So-TEN-Ken」/Ⓒ(株)Vixen、(株)誠文堂新光社
そのほか、この秋注目の天文現象などを知りたい方は、国立天文台WEBサイト「ほしぞら情報」をご覧ください。
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