SUBARU CYCLE FAN CLUB

ハシケンが挑む! 夏ライド2023
3 Peaks challenge 富士山

今回は自転車ジャーナリストのハシケンが挑む夏のチャレンジ企画。世界遺産富士山を舞台に、3つのメジャーな山岳道路を走破しながら富士山を一周するチャレンジライド。距離200km、獲得標高差5000mの実走記。

スパイスてんこ盛りライドは楽しい!?

最近、サイクリングの楽しみ方は広がり続けている。週末のサイクリングロードでロングライド、おしゃれなカフェライド、不整地を楽しむグラベルライドなど、心地よくペダルを漕いでいるだけでも、何気ない四季の移ろいに出会えて非日常を感じられる。サイクリングは楽しいのだ。でも、そこに「頑張る」という名のスパイスを加えると、よりその楽しみに深みが増す。カレーライスにスパイスが入った方が美味しく感じるのと同じ。そのさじ加減は人それぞれ。今回の夏のチャレンジ企画は、どちらかといえばスパイスてんこ盛りかもしれない!?
タイトル通り、今回は「3 Peaks challenge 富士山」だ。実はチャレンジ系イベントとしてはそこそこ知られた存在だったりする。ただし、簡単に達成できるほど楽な挑戦でもない。

ところで、「3 Peaks challenge 富士山」とはどんなものなのか説明しよう。富士山には自転車で走行できるメジャーな登坂道路が3本ある。一つ目が山梨県富士吉田市から登る「富士スバルライン」。二つ目が静岡県御殿場市の須走口から登る「ふじあざみライン」。そして3つ目が、同じく富士宮市から登る「富士山スカイライン」だ。いずれも麓から富士山5合目まで道が続き、標高は2300〜2400mまで到達する。
この3つのPeak(ピーク)をクリアしつつ、富士山麓の道路をぐるっと1周を目指す挑戦を指す。距離は200km、登りの標高の合計(累積獲得標高)は5000mを超える。多くのサイクリストにとって、一筋縄にはいかない難度を誇る。

今回のルートデータはこちら

各登りのコーススペックは次のとおりだ

富士スバルライン 24.4km 5.3% 1254mUP 吉田口の標高2300m
富士山スカイライン 13km 7.3% 916mUP 富士宮口の標高2400m
ふじあざみライン 11.6km 10% 1149mUP 須走口の標高2000m

なお、富士山スカイラインは、富士宮市街から富士宮富士公園線の上り区間を加えると、合計27.2km/7.2%/1867mUPになる。

どこの坂道から登るのか。一周の回り方は?

今回、個人のSNSでチャレンジすることを事前に公言したら、知人から経験談やコースのアドバイスを多くもらった。実はこの富士山3Peaksは初チャレンジだったため、こうしたリアルな事前情報はありがたかった。

まずは3本の登坂をどこから登り出すか。これは過去の達成者の中でも意外にも意見はさまざま。そして時計回りか反時計回りか。これに関しては、反時計回りのほうがスバルラインからスカイラインへのアプローチ区間が下り基調になり楽という情報を得た。事前にRide with GPSで作成したコースプロフィールでも確認できた。3つの登り以外の区間は、極力ラクをしたいというのが本音だ。
また、1周コースのロングライドの場合、基本的に反時計回りに走ったほうが、交差点が少なくスムーズだけでなく、安全性も高まりやすい。

起点は色々と悩んだが、最終的にスバルラインから登ることに決めた。正直、どこから登りはじめてもキツさはさほど変わらないのではという結論だ。アザミラインは平均勾配10%の特殊な激坂なので、これをどのタイミングでクリアするかは攻略のポイントだが、個人的に早朝1発目から挑む気分にはなれなかった。その感覚を大事にして、アザミラインをあえて最後の大トリに据え、チャレンジにスパイスを加えようと考えた。

ということで、今回のコースは、スバルライン→スカイライン→アザミラインの順に回ることにに決定。起点は、富士スバルラインの麓にある無料駐車場「富士山パーキング」(旧:富士北麓駐車場)をベースにする。ようやくコースプランが固まった。チャレンジ企画の楽しいところは、事前のプランニングを練ったり準備したりしている時間にある。

ガチ系サイクリストはSUBARU陸上選手!?

さて、今回、共にチャレンジする仲間を紹介しよう。こうしたハード系ライドの場合、単独では万が一のときにリスクがあるので、複数人で走ることをおすすめしたい。今回のお仲間サイクリストは、陸上長距離で活躍しているエリートランナーである口町亮さん。実はSUBARU陸上部所属の現役選手で、元旦のニューイヤー駅伝などで見せるダイナミックな走りにファンも多い。その走りのスタイルから「口町ロケット」の愛称でも知られている。そんなトップアスリートの趣味はロードバイク。しかもチョイ乗りサイクリストではなく本気系。今回の企画にも陸上部の夏合宿の合間の夏休みを使ってプライベートでご一緒することに。

チャレンジひとつ目はスバルラインから

チャレンジ当日、富士山は真っ白な雲に隠れてその存在を消していた。しかも、集合場所の麓の富士山パーキングでさえ、濃霧で視界不良。小雨混じりでどうなることかと思っていたが、スタート予定時刻の7時が近くづくにつれ天候が回復。雨の中で下山だけは避けたいと思っていたので心底安堵した。

駐車場を出てすぐに登り始める。富士スバルラインの五合目までは約28kmの道のり。早朝なので目覚ましがてら、会話を楽しみながら余裕あるペースでモーニングヒルクライムを楽しむ。スバルラインは有料道路なので自転車通行料は200円。小銭を忘れないように気をつけたい。

真夏の酷暑とは無縁の、雨あがりの心地よい高原世界を駆け上がっていく。口町さんも余裕しゃくしゃくだ。日本最大のヒルクライムレース「Mt.富士ヒルクライム」の舞台でもあるコースを、大会のタイムでいう1時間30分ほどのペースで進んでいく。予定よりちょっと速い。ここで10分を削り出すように頑張ったところで先は長く、序盤はなるべく足を使わないほうが無難だ。

4合目が近くづくと、青空ものぞかせ一気に好天。1日のうちで3度も標高2000m以上の世界を走るこの企画は、天気次第で難易度が大きく変わってくるだろう。悪天を避け、チャレンジ日は慎重に判断したいところだ。
スバルライン五合目駐車場は、多くの海外観光客で賑わいを見せる。まだ富士山山頂は雲の中だったが、予想以上にスムーズに1本目のピークをクリアした。

爽快な高原ルートから2つ目のピークへ

ここからはしばらくダウンヒル区間。スバルラインを一気に降った後、若干の登り返しがあるものの、基本的には下り坂基調で2つ目のスカイラインへの登り区間へ。今回は国道139号線ではなく、一本山側を走る富士宮鳴沢線を選択。国道に比べて交通量が少なく快適だ。口町さんが先頭で、青木ヶ原の樹海や高原の中を駆け抜けていく。

快調に下りを終えると、3ピークスのうちの2つ目「富士スカイライン」へと続く富士宮富士公園線の登り坂へ。この地点で標高500mほど。ここから今回の最高地点である標高2400mまで一気に登っていくことになる。
富士山スカイライン自体は距離13.4kmだが、その起点までのアプローチ(富士宮富士公園線)が長い。旧料金所ゲートまで距離14kmある。
富士宮富士公園線は序盤から勾配がきつく、平均勾配は7%半ば。ここまですでに95kmほど走ってきたふたりは、登りでペースを落としてマイペースに切り替えることにした。ここで無理をすると、最後のアザミラインで痛い目に遭うことはわかりきっているからだ。

爽快な高原ルートから2つ目のピークへ

唯一の救いは、日が昇り気温が上昇し出したタイミングで、木陰の多い富士宮富士公園線に入れたことだろう。傾斜はキツいが、直射日光を避けられるだけで負担はかなりラクだ。

スカイラインに入ると木陰は減るが、その分、次第に景色がひらけてくる。標高2000mを超えてくると、富士市や沼津市街、その先に広がる太平洋まで一望できる絶景を楽しんだ。サイクリストにとって、人気レースの舞台となるスバルラインや話題性のあるアザミラインに比べて、やや地味な印象さえあるが、走りごたえ、ロケーションといい、そのポテンシャルは高い。

標高2400mの新五合目の登山口の標識で、スバルライン五合目に続いて記念写真を押さえる。今回のコースで最も山頂に近い地点なので、山頂が目と鼻の先にあるようにも感じる。ここまで距離124km。ここから再び一気にダウンヒルが始まる。目指す先は、3ピークス目となる「富士アザミライン」だ。

実は、このダウンヒルの途中で余裕があれば立ち寄ろうと計画していたスポットがあった。標高1440m地点の御殿場口だ。ここには登山者のターミナル的な役割を果たす施設「Mt.FUJI TRAIL STATION」があり、サイクリストも休憩できる。今回は、時間的にやや余裕がなくなっていたのでパスすることしたが、ここを加えると、富士山4Peaksチャレンジになる。

オリンピックコースをたどり3つ目のピークへ

自衛隊滝ヶ原駐屯地に向けたダウンヒルをこなす。この区間は東京2020オリンピックロードレースコースの一部で、世界のトップレーサーたちが時速100km近い速度で駆け下った道だ。こちらは安全第一でペースを抑えながらも、選手になった気分で下りを楽しんだ。アザミラインへのアプローチの途中には、オリンピックの感動と興奮を未来に伝える「レガシー銘板」も。

富士アザミラインへの起点、道の駅すばしりに到着したのは16時ごろ。太陽はだいぶオレンジがかり、気づけば夏らしい夕陽に照らされていた。朝7時にスタートしてからすでに11時間が経過。アザミラインの下り区間で日没は迎えたくないため、タイムリミットはギリギリのところだ。
ここまで2Peaksを達成してきた2人の疲労感はたっぷり。特に口町さんは、道の駅すばしりで出発写真を撮ろうとしたところ、足が盛大に攣って身動き取れず。トップアスリートとはいえ、フィールドが異なると身体に堪えるようで・・・。しかしながら、陸上競技の現役選手でこんなロードバイクが好きなアスリートに出会ったことはない。

下を向かずに前へ前へ!

アザミラインの厳しさは言わずもがな。五合目の標高は2000mながら、距離たったの11kmで駆け上がる。平均勾配は10%に迫る。序盤から上がらないペースに、ダンシングを織り交ぜながらペダルひと漕ぎひと漕ぎ力をこめて進むしかない。
およそ中間地点、一旦降った直後に平均20%近い勾配が続く馬返しポイントに突入する。後ろを振り向くと、「もう限界!」と言わんばかりの表情だ。ペースは上がらないが、下を向かずに前へ前へ!

それでもペダルを漕いで3Peaks目を目指した。あざみラインを上り出して1時間30分ほど。あたりはまもなく日没な雰囲気だが、五合目からの下界の景色はこれまた特別だった。スマホをジャージポケットから取り出して記念撮影をしようとすると、画面の時刻はすでに17時30分をまわっていた。山小屋のおばあちゃんに、「もう鹿が出てくる時間だから最後まで気をつけなよ」という優しい忠告を守り、スピードを落として慎重に降ることにした。実際、降り終わるまでに道端で2頭の鹿と出会ったのだった。

道の駅すばしりに戻ってきた途端、ひとまず無事に3Peaksを達成した安堵感に包まれる。ここから朝スタートした富士山パーキングまでは20kmほど残している。しかも、静岡から山梨へ抜ける籠坂峠越えがあるが、3Peaksに比べれば大したことはない!

刺激たっぷりのキツくも楽しいよき夏の思い出

クルマのヘッドライトが存在感を増してきた頃、籠坂峠を越えて山中湖畔へ。最後の10km弱は日没ライドになってしまったが、1kmごと感慨に浸りながらフィニッシュ地点へ。富士山が見えるはずの方角に視線を移すと、そこには登山道に連なる登山者たちの灯が浮かび上がっていた。

こうして、「3 Peaks challenge 富士山」を無事に達成。距離207km、獲得標高差5500m。最後のアザミラインは、フィジカル的にはもちろんのこと、ひとりではメンタル的にかなりキツかったはずだ。ふたりにとってはじめての「3 Peaks challenge 富士山」は、刺激たっぷりのキツくも楽しいよき夏の思い出になった。

ところで、今回の「3 Peaks challenge 富士山」には特別ルールがあるわけではない。今回は1日で走り切ることを目指したが、1泊2日でチャレンジしたってよいのだ。大切なことは、日頃の自分よりもスパイス多めのライドにチャレンジすること。いつも同じサイクリングコースを走ってばかりではなく、思い切って新しいコース、新しいことに挑戦してみてはいかがだろう。

TEXT&PHOTO

ハシケン(橋本謙司)

自転車業界のメディアの立場として活動を続けて15年になるフリーランスの自転車ジャーナリスト。専門誌やウェブメディアにて連載をもち、スポーツ自転車の情報を広く発信。日本各地のサイクルツーリズム振興施策や、リアルイベントの企画・広報などにも携わる。過去にMt.富士ヒルクライム一般の部優勝など、自身もアマチュアレースを走り続ける。今回は本人も読者もワクワクするような夏の峠チャレンジ企画を実行した
https://www.hashikenbase.com

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