SUBARU CYCLE FAN CLUB

歴史と桜と建築物。お城の街弘前をゆく自転車旅

ソメイヨシノの名所、りんごの名産地として知られる青森県・弘前市は、隠れた極上サイクリングスポットとして知られています。前回、出張のついでに弘前市から金木町までサイクリングをしましたが、その2日目。まだ八重桜が咲き乱れている弘前城周辺でポタリングを楽しみました。

歴史と文化を愛でる自転車旅

明確な基準はないのですが、ポタリングとはゆっくり走るサイクリングのことを言います。"自転車で散歩"を行う「散走」という言葉もありますが意味は同じものといっていいでしょう。頑張らない程度の速度と距離で、景色や食べ物を楽しみながら走るのがポタリングです。

今回は弘前城周辺を中心に半径10kmくらいの範囲内で歴史と景色、そしてグルメを楽しむポタリングを行いました。
今回走るスポットは以下の6か所です。
1.弘前城周辺
2.最勝院五重塔
3.袋宮寺
4.富田の清水
5.弘前れんが倉庫美術館
6.藤田記念庭園

地元で自転車のツアーガイドを行っている友人に協力をしてもらい、弘前城周辺から走り始めます。

現存天守が残る弘前城趾を走る

現在は弘前公園となり、桜の名所や市民の憩いの場になっている弘前城。江戸初期の1611年に完成し津軽氏の居城として260年間使用されました。城跡は築城当初の形態が今も残されていて、国の史跡として指定されています。お濠の外周は4㎞ほどで、のんびり走るポタリングにも最適です。まずは三重になっている濠の一番外側を走ります。

外濠をぐるりと囲むようにソメイヨシノが植樹されていますが、残念ながら見ごろの時期は過ぎていました。しかし散った花びらがピンク色の花筏(はないかだ)となって、また別の風情を漂わせていました。

花筏を眺めながら、お濠を半周ほど走り城内へと進みます。弘前城には城門が五棟残されていますが、いずれも重要文化財に指定され往時の面影を残しています。ちなみにこれは東内門とよばれる、二の丸にある門です。

自転車を"下馬"して本丸

城内へ入り2分ほど走ると見えてくるのが「下乗橋」です。本丸につながる橋ですが、かつて藩政時代、ここには下馬札が置かれ、馬から降りるよう定められていました。橋の名前はこれに由来していると言われています。

本来はこの橋の上から弘前城を望むことができますが、2015年に石垣の修復のため、天守は「曳屋」で移設されています。

現在はこのような状態。遠くに少し屋根だけ見えているのが、曳屋で移設された弘前城です。曳屋(曳家)とは建物をそのままの形で移動させる伝統技術。2015年に約2か月かけて約70m離れた場所に移動させています。

明治29年(1896)にも石垣の修復のため、曳屋が行われたとのこと。曳屋で移設、と言葉では簡単に書けてしまいますが、百年に一度の大事業であることが分かります。当初は2021年に工事が完了する予定でしたが、現在は2025年に曳き戻しされる予定。

ソメイヨシノは見頃を過ぎていましたが、八重紅枝垂れは満開! 白壁のお城と濃いピンク色のコントラストは見事のひと言。

お城のすぐ裏手にある、本丸の展望台からは岩木山の姿も望むことができます。周りに障害物も少ないため、裾野まで見ることができるベストスポット。この日は霞がかかっていたため、あまりはっきりとは見られませんでしたがその雄大さが体感できました。

自然豊かな城内を散策

本丸を後にして、しばし城内を散策します。日かげになっているところではまだソメイヨシノも咲いていて、桜のトンネルを走れました。弘前城の桜はリンゴ栽培の技術を使って管理されているため、花の数が多く枝がモコモコとした桜の花を咲かせます。管理する「桜守」は城内にある約2600本の桜を年間を通じて見守っているそうです。

城内はかなり広大! 東京ドーム約10個分(50ha)の中には桜だけではなく水芭蕉も咲き誇るなど、お花の宝庫といった様子。

訪れたのはちょうどゴールデンウィークのころ。「弘前さくらまつり」が開催される直前とあって、さまざまな出店も準備されていました。奥に見えるのはおどろおどろしくもレトロな風情を漂わせるお化け屋敷です。ほかにも味わい深い出店がたくさん。早朝なので人気も少なく開いていませんでしたが、立ち寄りたいお店があちこちにありました。

狛ウサギがいる東北随一の五重塔

さて弘前城をひと回りした後は城外へ。歴史ある城下町ということもあり、特に城の周辺には伝統ある神社仏閣が点在していてポタリングには最適。まず最初に訪れたのは東北地方には珍しい五重塔で知られる最勝院です。

全国に分布する五重塔の中で、江戸以前のもので現存するのは全国で20あまり。この五重塔は本州最北のもので1908年に重要文化財に指定されています。

市内のランドマークにもなっていて、遠くからでもその高層木造建造物の姿を望むことができます。

さてこのあたりには、自分の干支を祀った神社(寺)を信仰する「一代様(いちだいさま)」という風習があり、新年などにはそのご本尊をお参りするそうです。つまり、それぞれに"My神社(寺)"があるのです。この最勝院は「卯年」のお寺のため、狛犬ならぬ狛兎が鎮座しています。

最勝院からほど近いところにあるのが、自転車乗りにはありがたい「自転車お守り」を受けることができる「袋宮寺(たいぐうじ)」です。街の一角にひっそりと佇む小さなお寺ですが、現在のお堂は1677年に建立された歴史あるもの。

お堂の中には県下最大の木造仏、東北地方でも珍しい「十一面観世音立像」が祀られています。高さは約6mにおよび、迫力がありつつも優しい佇まいを見せる大仏です。

名水百選の地でひと休み

さてここで一旦ウォーターブレイク。富田の清水(しつこ)で、ボトルに水を汲んで休憩します。ここは17世紀末に初めて製紙法が導入された際から、紙すきのほか、生活用水としても利用されていました。

国指定の「名水百選」に選ばれているなど、水質はバツグン。今なお飲料水としても使用可能です。ちなみに水槽が4つ並んでいて、1つ目が飲料水、2つ目が洗顔用、3つ目が漬物洗い、4つ目が洗濯というように水槽使用にきまりがあったようです。ボトルに直接水を補給して飲んでみましたが、程よく冷たくカラダに染みわたる柔らかい味でした。

明治~大正期のモダンな建築を愛でる

まだ散策は続きます。弘前市には江戸期の神社仏閣も多く残されているのですが、明治~大正期のモダンな建築物も数多く見られる場所です。ウォーターチャージした後に立ち寄ったのは、弘前れんが倉庫美術館です。明治・大正期に酒造工場として建設された煉瓦造の建物を再生させたのが特長。戦後にはシードルを製造していたとのこと。青い空、緑の芝生、そして焦げ茶のレンガが絶妙な色合いがレトロでありながら、どことなく新しさも感じさせる雰囲気でした。

藤田記念公園に向かうまでのルートには、明治期に建てられた旧第五十九銀行本店本館も。木造のルネサンス風建築で左右均等、シンメトリーが特長です。この地の多くの洋風建築を手がけた"棟梁"堀江佐吉によるもので、和洋の技術を結集したもの。昭和後期に取り壊される予定でしたが、市民の要望もあり、現在の場所に曳屋して保存されています。

異世界を感じる大正ロマンの洋館

さて本日最後の目的地に到着。この藤田記念庭園にある「旧藤田家別邸洋館」は、先ほどの旧第五十九銀行本店本館を建築した"棟梁"の六男・金蔵が手がけました。八角形の尖塔屋根のほか、内側にはステンドグラスやシャンデリアなどが奢られた空間になっています。魔女が登場する漫画作品にも登場するなど、大正ロマンとともに、異世界を感じさせるデザインでもあると感じました。

建物内は「大正浪漫喫茶室」というカフェになっていて、弘前市の名物のひとつ、アップルパイも味わうことができます。当時としてはかなり珍しい"サンルーム"もそのままの姿で残されていて、美しく手入れされている庭を眺めながらのひと時を過ごせます。

さて今回は走行距離15㎞ほどのポタリングでしたが、城も桜も建築物も巡ることができる、充実したものでした。歩くには大変な距離でも自転車ならラクに移動ができます。遠くまで走る、激坂にチャレンジするなど自転車の楽しみ方はさまざまですが、のんびり走るのも一興。自分なりの自転車の楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょうか?

  • 取材・撮影/今 雄飛(こん ゆうひ)
  • 協力/101デザイン

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