SUBARU CYCLE FAN CLUB

スバリストなサイクルライフ

国道6号線を封鎖し211kmのレースを作る人

福島県内でロードレースを企画・運営するLink TOHOKU代表の鵜沼誠さん

2023年9月、国内最長距離となる市民参加型自転車ロードレース「ツールドふくしま」が開催される。福島県の沿岸と内陸の広域エリアを舞台にし、距離211kmでレースが行われる。誰でも参加可能な市民レースとしては、ニセコクラシック(北海道)やツールドおきなわ(沖縄)と並ぶ、本州初となる大規模な市民ロードレースになる。しかも一桁国道(国道6号線)を規制しての画期的なレースに、すでにレースフリークたちの話題をさらっている。

このツールドふくしまの仕掛け人こそ、愛車のフォレスターと共にサイクルライフを愉しんでいる鵜沼誠さんだ。鵜沼さんは自転車イベントの企画・運営のプロフェッショナル集団「Link TOHOKU(リンク東北)」の代表だ。現在、福島復興サイクルロードレースシリーズをはじめ、福島県内を中心に多くのレースを手掛ける。また廃校になった小学校をリノベーションした趣味複合施設「イイトコ」も経営し、ふるさとに根差した活動を行っている。

レースに参加して家族旅行を楽しむ

そんな鵜沼さんのスポーツ自転車との出会いは高校3年時までさかのぼる。そして社会人になってからは、趣味としてスポーツ自転車を楽しむサイクリストとして、各地のレースに挑戦してきた。
「地元に競輪場があり、高校3年時にそこのバンクで走ってみたことが始まりで、ロードバイクではなくトラックバイクから自転車競技の世界に入りました。競輪選手を夢見た時もありました」

奥様と結婚して子どもを授かってからは、趣味として自転車を楽しむ日々。そして、子どもが小学生になった頃からは、家族と一緒に各地の自転車レースに参加するようになった。
「ツールド北海道の市民レースや、ツールド宮古島、ヒルクライムレースのツールド草津にも挑戦してきました。ただしガチでレースをやるというより、目的は家族旅行とレース参加が半々。しっかり地元の観光を楽しんでいました」

生き死にを経験して人生観が変わった

愛車はスペシャライズドのターマックSL6コンプ(手前)と、S-WorksエピックハードテールAXS(奥)だ

現在はLink TOHOKUで自転車レースを手掛けるが、大学卒業後は地元福島のテレビ局に就職。その後、東京で地上デジタル放送の切り替えなどを行った経歴をもつ。
こうしてテレビマンとしてキャリアを積んでいた中で転機となったのが、2011年3月の東日本大震災だった。生まれのいわき市はじめ、ふるさとの景色が大きく変わってしまった。33歳のとき、長年勤めたテレビ局を退職。

「未曾有の災害に直面したことで、人はいつ死ぬかわからないと。生き死にを経験すると人生観が変わるものです。テレビの仕事も好きでしたが、一度きりの人生なのでスポーツを活かして福島を元気にしようと思ったのです」

何も知らないところからのスタート

当時、津波や原発事故により地元の福島の風評被害は広がっていた。鵜沼さんは好きな自転車をはじめとするスポーツの力で福島を元気にできないかと考えた。そして立ち上げたのが、福島県内でスポーツイベントの企画・制作までを一手に担うLink TOHOKUだった。しかし、当時はいちサイクリストというだけで、自転車イベントを作るノウハウもなければ、レースでは必須の記録計測の機器もなかった。

「まず警察署に行けば、道路使用許可が簡単に取れると思っていましたから・・・。実際は近隣住民の合意、地域の道路管理事務所の許可などを得て、はじめて警察署での手続きが始まるわけで、当時は本当に何も知らないところからのスタートでした」

福島を縦断する公道レースの実現へ

趣味複合施設「イイトコ」がある小野町で開催する小野こまちロードレース

まさにゼロからひとつ一つ学び、専門的で難しい手続きを重ねていった。そして、地元の理解もありレースを形にしていくことができた。現在、福島県内で「福島復興サイクルロードレースシリーズ」として、年間9大会を実施する。そのすべてが実現が難しいとされる一般公道を交通規制して行う公道レースだ。
スポーツイベントで福島を元気にしたい・・・。その想いに突き動かされ、2013年からLink TOHOKUとして活動。そして、節目の10年目となる今年、ついに国道6号線を封鎖して福島を縦断する国内最長の公道ロードレース「ツールドふくしま」の実施が決まった。これは大きな目標でもあった。

「原発事故のあった沿岸部をスタートする大規模な公道ロードレースを実現したいという夢が実現しました。大会はこれからですが、世界に向けて発信できるイベントへと成長していければと思っています」

イベント当日は運営管理責任者の立場で現場に入ることが多い

レヴォーグではなくフォレスターだった

愛車はフォレスターX-BREAKモデル

自転車イベントは自動車メーカーがスポンサーにつくことが多い。これまで主催する自転車レースの協賛メーカーとしてSUBARUのクルマに乗る経験があったことも、今、鵜沼さんがフォレスターに乗る理由だ。
「SUBARU車の限界域での運動性能は抜群でした。自転車ロードレースでは下り坂を時速80kmほどで下って急カーブしなければいけないシーンがいくつもあります。他メーカーが不安というわけではないですが、 路面をしっかり捉えて曲がっていく安定性は高く、レースの先頭を走る先導車の役割としても安心できます」

身長195cmの大柄でも窮屈さを感じない室内空間

自動開閉するパワーリヤゲートで積み込みもスムーズ

愛車のフォレスターは、仕事とは切り離したプライベートカーだ。モデルは、オレンジラインが存在感を放つX-BREAK。フォレスターに決めた理由は高身長の鵜沼さんでも快適に乗車できる点もポイントだ。
「サイクリストとしては、自転車ロードレースのニュートラルカーとしても導入されているレヴォーグへの憧れがありましたけど、身長195cmもあると窮屈なのです。しかも息子も190cmと大柄なので、家族でドライブするには車内空間が狭いのです」と苦笑いを浮かべる。
その点、フォレスターは車高があり、走破性に優れるSUV設計で、内装もアウトドアアクティビティ向けに設計されている点がドンピシャだった。
「スキーやスノーボードも趣味なので、雪道も安心のSUVスタイルで、内装も防水性にすぐれる専用シートやカーゴフロアボードなどアウトドアスタイルに最適です。また、自転車は前輪を外せば余裕をもって積み込めます。ビッグサイズの自転車でも難なく載せられる点が嬉しいですね」

後列シートを倒せばストレスなく大型ギヤを積み込める広さを確保

防水性にすぐれる撥水ポリウレタン仕様のアウトドアスタイルのシート

雪山、不整地も快適走行を約束してくれるSUVスタイル

汚れもサッと落とせる撥水カーゴフロアボード

フォレスターを走らせてヒルクライムへ

フォレスターが納車された当日は、京都への旅行を思い立ち、道中で1泊しつつ片道700km、往復1400kmのドライブ旅行を家族4人で楽しんだ。今も時間さえあればフォレスターに自転車を載せてサイクリングに出かけている。

「サイクリングは週2回ほどですが、最近は景色を楽しみながらのヒルクライムを楽しんでいます。フォレスターにバイクを積んで、ライドを終えたら麓の温泉に入ってくるスタイルです。コースを自身で開拓して開催に漕ぎ着けた磐梯吾妻スカイラインは思い入れがあるので、よく走りに行っています」

磐梯吾妻スカイラインの他にも、同じくヒルクライムレースを開催している田村市のあぶくま洞もホームコースのひとつ。太平洋を一望できるいわき市の湯ノ岳も好きなコースだ。

大会開催を実現した磐梯吾妻スカイラインのコース

アタックすれば未来は拓けてくる

オフロードパークの設計・監修をした「小野ふれあいオフロードパーク」

ゼロから始まった自転車ロードレース開催の道。ついに福島県内を縦断する国内最長ロードレース開催までこぎつけた。小野町の複合趣味施設「イイトコ」の運営、最近では電気の乗り物の開発にも携わるなど活動の幅は広がり続けている。その原動力になっているのが、自転車ロードレースに見るアタック(逃げ)にある。
「ロードレースの逃げは簡単に成功するものではないです。それでもアタックしないことにはチャンスがないのと同じで、仕事でも考えているだけでは何も実現しないと思います。アタックが失敗しても、逃げなければ見れない景色もある。だから仕事もまずやってみる! 失敗しても得られる ものがたくさんあります。自転車イベントもそうやってここまで辿り着きました」
アタックしなければ変わらない。アタックすれば未来は拓けてくる。鵜沼さんはこれからもロードレースのように逃げを打っていく。

廃校をリノベーションして作った趣味複合施設「イイトコ」も経営する

コースはすべて自転車で走破してチェック

かつて親子で参加したツールドおきなわ。当時中学3年生の息子と共に。

来年から社会人になる息子とは、かつて福島から千葉までロングライドを楽しんだこともあった。ただラーメンを食べに行くために。片道160km、往復320kmの道のりをともにペダルを漕いだよき思い出だ。また、小学生の頃から親子でツールドおきなわに参加してきた。長男は小学生レースで優勝を飾り、父は50kmの部で一桁フィニッシュを果たした年もあった。今年、鵜沼さん自体、久々のおきなわ挑戦は市民最高峰カテゴリーの市民210kmの部に出場予定だ。
その前にまずは9月の「ツールドふくしま」の開催が待っている。コース設計の段階で、211kmのコースをすべてロードバイクで走って確認した。
「実際に自転車でコースを走って確認することは大事です。自転車ならではの視野や距離感、なんとなく危ない箇所だなぁというようなサイクリストならではの感覚を大事にして必要な対策を講じていきます。まずは大きな事故なく成功するように準備を進めていきます」
自ら手掛ける自転車レースの先導車両でSUBARUに乗り、プライベートでもフォレスターに自転車を載せて旅行やサイクリングへ出かける日々。目下、国内最長ロードレース開催に向けて、公私共にアクセル全開でペダルを踏み続ける。

TEXT&PHOTO

ハシケン(橋本謙司)

映像と写真と文字で伝える人。自転車業界のメディアの立場として活動を続けて15年になるフリーランスの自転車ジャーナリスト。専門誌やウェブメディアにて連載をもち、スポーツ自転車の情報を広く発信。e-Mobility協会スペシャルパートナー。日本各地のサイクルツーリズム振興施策、リアルイベントの企画・広報などにも携わる。乗鞍・冷泉小屋スタッフ。過去にMt.富士ヒルクライム一般の部優勝など、自身もアマチュアレースを走り続ける。

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