コロナ禍によって世界的に人気が高まっている電動アシスト自転車(以下 e-BIKE)。その中でもマウンテンバイク(MTB)に電動アシスト機能を搭載した「e-MTB」は、まったく新しい愉しみ方ができる乗り物として特に注目を集めています。電動アシストの力を借りることで体力や技術に不安があっても自然の中で愉しむことができるe-MTBの魅力を紹介します。
体力もテクニックも必要なし!オトナにこそ乗ってほしい"e-MTB"の魅力を体験

オフロード初心者でも十分に愉しめる

MTBに電動アシスト機能を搭載したのが「e-MTB」です。見た目はほとんど同じように見えますが、その乗り味は大きく違います。どちらもオフロード走行を愉しめる自転車ですが、e-MTBは人力のMTBでは走れなかったような急坂やスタックしそうな悪路などもグイグイと走ってくれます(もちろん個人の力量によるところもありますが)。
このe-MTBが出始めた当初は「人力で走ってこそスポーツバイクじゃないか!」という批判的な意見もみられました。しかし、まったく新しい遊び方や乗り方ができることから、今では従来のMTBライダーたちにも受け入れられています。e-MTBが盛んなヨーロッパでは、上りの時にはリフトのようにアシスト機能を使ってラクに上り、下りを愉しむ、という遊び方が定着しています。体力に自信がなくても上ることができて、オフロード走行が愉しめる。もはやMTB代替品ではなく、新しい乗り物、スポーツとして認知されているのです。
e-MTBの心臓部「ドライブユニット」

さてe-MTBは主にモーター、バッテリー、コントローラーなどからなる「ドライブユニット」といわれるものを搭載し、アシスト機能を発揮しています。この自転車の場合、クランクの軸の部分、ボトムブラケットと言われるところにモーターが内蔵してあります。ものによってはホイールの軸の部分にモーターが内蔵していることもありますが、この画像のようにボトムブラケットにモーターが内蔵してある「ミドルドライブ式」が車重のバランスが良く、自然な乗り味のため人気のタイプです。

近ごろのe-MTBのバッテリーは、フレームと一体型になるタイプが一般的です。以前はいわゆるママチャリタイプのようにバッテリーがフレームからはみ出してついているものがありましたが、近ごろは大容量のバッテリーでありながら普通のMTBと遜色のないデザインのe-MTBが登場しています。

ハンドル中央にはアシスト強弱や速度、走行距離などを表示するモニター(サイクルコンピューター)をセット。電源やライトのON/OFF、アシスト力の強弱は左のコントローラーで操作します。
サスペンションの種類によって2つのタイプがある

e-MTBには大きく分けて前後にサスペンションが付いた「フルサスタイプ(①)」とフロントだけにサスペンションが付いた「ハードテールタイプ(②)」の2種類のものがあります。アシスト機能がないMTBには前後のサスペンションがついていないものもありますが、e-MTBのほとんどはこの2種類に集約されるといってもいいでしょう。

リアサスの形状は自転車によってさまざまな形状がありますが、その機能としては路面からの衝撃を吸収し、乗っているライダーの身体に伝わる振動を減らします。またタイヤが地面をつかむグリップ力を高めて、特にオフロードでは走りやすくなる効果も発揮します。

ハードテールはフロントだけにサスペンションが搭載されたシンプルさが特長です。また見た目のシンプルさだけではなく、リアのサスペンションがない分、軽量で取り扱いしやすいところも人気です。
この両者の大きな違いは重量ですが、e-MTBには電動アシスト機能がついているため、上りでの重量はあまり気にする必要がありません。ただしクルマへの積み下ろしや下り走行の際の取り回しには大きな差があります。またサスペンションはメンテナンスする必要もあり、また細かくセッティングを行うのは初心者には難しいところもあります。
どちらを選ぶかは悩ましいところですが、簡単にいえば「ハードな走りをしたい」「メカに強い」場合はフルサスタイプ、「メンテナンスの機会を減らしたい」「初心者」という場合はハードテールを選ぶといいでしょう。
共通のパーツ
e-MTBの特徴的な2車種としてフルサスタイプ、ハードテールタイプの両方を紹介しましたが、この両者には共通する部分もあります。

まずひとつめはフロントサスペンションです。路面の凹凸を吸収してスムーズに走るためのパーツです。またブレーキをかけたときのショックを吸収して、しっかりと制動させる効果もあります。

前後のディスクブレーキもほとんどの車種に搭載されています。軽いブレーキタッチで大きな制動力を発揮するほか、ウエットコンディションでもしっかりとスピードコントロールが可能です。

リアにはギアも搭載されています。アシストパワーの強弱も変更できますが、ギアが搭載されていることで、より細かく路面の状況に合わせた走行ができるようになります。またアシスト力を抑えて、軽く踏めるギアを選択するとこれまでのMTBのように"よりスポーツに近い"ライディングも可能になります。

タイヤも走行性能を高めるために重要なパーツです。エアボリュームが多くなり、乗り心地がよくなるため幅が広い2~3インチが主流です。ちなみにe-MTBのホイールサイズは29インチ、27.5インチが一般的。29インチはスピード維持力が高く、27.5インチは小回りがきくのが特徴です。
さて気になる走行性能は

【平地走行】
アシストパワーのおかげで、漕ぎ出した瞬間から脚に重さを感じることなくスムーズに進んでいきます。サスペンションとタイヤのエアボリュームが高いため、乗り心地もかなり良くまさに「汗もかかない」快適さで走ることができます。

【上り走行】
オフロードの上りはMTBのもっとも愉しくツラく難しいパートですが、e-MTBならどんな人もスムーズに上ることができます。通常のMTBでは斜度や路面状況に合わせた最適なギア選択を行って、前後の体重移動をしつつ後輪が滑らないように上っていくことが必要でしたが、e-MTBの場合、よほどの急斜面意外は特に何も考えなくてもグングン進んでくれます! しかも脚にかかる重さもあまり感じません。あまりにグングン上ってくれるので、ついつい上りすぎてしまうほど。

【下り走行】
通常のMTBとあまり大差がないように思えますが、その車重のおかげで意外なほど安定感があります。車体の真ん中にあるボトムブラケットにモーターが搭載されているので、重量的にバランスがとれて安心感のある下りができます。

【コーナー走行】
重量ポイントが車体の下側のボトムブラケットにあることは、コーナリング中にも大きなメリットをもたらしてくれます。低重心の設計になっているためコーナリング中も安定感が高く、グリップを失うことがあまりありません。自分のようにMTB歴が浅いライダーだと、ヒラヒラと左右に動かしやすい軽量なバイクよりもどっしりとした安定感があるもののほうが安心感を得ることができます。車重は重いのですが左右に連続するコーナーでも、切り返しがしやすく思った以上にスポーツをしている気持ちになります。
このようにe-MTBがもつアシスト機能などのおかげで、さまざまなレベルのライダーがいろいろなコースでオフロードライドを愉しむことができます。残念なのがフィジカル的、テクニック的にもレベルが上がった訳ではないというところ。ほとんどe-MTBのおかげです(笑)。自分の実力を過信しないように、安全走行を心がけましょう。

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- 取材協力:トレイルアドベンチャー